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佐藤和仁税理士事務所
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与信審査の実際
銀行融資であれクレジットであれ与信審査というものが欠かせません。ただ、これは何も日常の仕事に程遠い話ではなく、新規取引先と信用取引を始める場合などには普通の中小企業でもありうる話だとおもいます。与信審査とはその名のごとく「信用」を「与える」審査のことです。クレジット業界では「与信」と呼んでいます。
与信調査は一般的には次の4段階(というか4つの視点からの審査)に分けられます。
1. 法人(或いは、個人の)実態調査
2. 購入商品や借入金額の使途目的
3. 購入金額や借入金額の妥当性
4. 返済能力
で、実はこの中で最も重視されるのは「1」なのです。と言うか「1」「2」「3」は相互に関連性があり一体不可分と言っても良いかもしれません。特に新規取引の場合は法人や個人の実態調査はかなりのウエートを占めます。なお、既存取引がある場合は「1」の要素は薄れ、「4」「2」「3」の順番になるようです。
実態調査って何ぞや?これは有体に言うと「その法人や個人が本当に存在しているのか?」ということです。架空会社ではないのか?とか架空人物ではないのか?といったことです。どういったことを実態調査として見ているかと言いますと、法人であれば、
1. 商業登記簿謄本はあるか?閉鎖事項や履歴事項はどうなっているのか?
2. 本店登記住所、代表者個人住所の住宅地図での確認
3. 上記住所地の土地建物の登記簿謄本を取得し、所有か賃貸かの確認。登記名義人との関係や過去の担保設定の状況調査。差押等なかったかどうか?
4. 借入申込書に記載住所と上記の公募公図との照らし合わせ。事務所所在地が別であれば、事務所所在地についても上記2.3の調査
5. 代表電話は固定電話かどうか?電話は通じるのかどうか?
6. 登記住所、申込住所、代表者住所の現地訪問。事業をおこなっている様子があるのかどうか?看板はあるのかどうか?郵便受けはどうか?
7. 返済口座や取引口座の支店はどこか?登記住所や事務所住所、代表者個人住所の近隣か否か?
などになります。個人も基本は一緒ですが、取得する公簿は住民票になります。各々の項目も掘り下げると更に細かくなるのですが、要するに事業実態・営業実態があるかどうか?ペーパーカンパニーとかで無いのかどうか?を調査しているわけですね。
中でも、意外に思われるかもしれませんが、事業用の固定電話があるか無いかというのは結構重要視されます。モバイル環境が整ってきている現下、代表電話が携帯電話というのも珍しくないと思いますが、こと、与信審査の点での信用感はありません。また、事務所に関しても同様の見方をされるケースが多いです。自宅兼事務所よりは、事務所のみのほうが好ましいですね。
銀行やクレジット会社にとっては、貸付けた元本から生ずる利息手数料が収入になります。ベンチャーファンドのように出資した先が成長したら、株式のキャピタルゲインで一気に稼ぐという収入構造ではありません。また、少なくとも出資者という位置づけであれば会社設立に何らかの形で携わるでしょうから、法人実態がどうのこうのと言ったこともないはずです。ですから、金融機関の与信審査の中でも法人実態の調査と言うのはかなり細かくなるわけです。
ところで、前述した実態調査の手法ですが、実はほとんどが誰でも入手可能なものによって行われます。謄本やら住民票やら住宅地図やら・・・。帝国データバンクや東京商工リサーチの資料を使うこともありますが、あくまで副次的なものに留まります。ということは、一般の中小企業でも実施可能なのです。確かに手間隙は掛かりますが、信用取引を始める前には、少なくとも実態調査くらいはされたほうが、その後の取引の安全につながり、ひいては確実な債権の回収へと繋がると思いますよ。
投稿者: 佐藤和仁 日時: 2008年10月20日 12:06