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佐藤和仁税理士事務所
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生命保険の節税効果とは?
今回は少し実務的な事を書こうかと思います。
法人の決算間際になりますと、予想外の黒字のため納税が結構な額の見込になってしまい、慌てて決算対策・・・というある意味では嬉しい(?)光景が見られます。まぁ、国税庁の統計では申告所得が黒字の法人は全体の約3割強ですので、世間の企業の7割は赤字会社ということになります。ですから黒字になることは嬉しい筈なのですが・・・。
人間心理は不思議なもので、多くの経営者が黒字を目指しているにもかかわらず、結果、大幅黒字になりますと税金が頭痛の種になるようです。日本の法人税制ですと、おおよそ儲けの4割がお上に召上げられます。これに消費税も加わるわけですから納税の負担感は大きいのも頷けますが・・・。
さて、法人の黒字対策のために良く使われる手法が、法人を契約者(=保険料負担者)にして生命保険に加入するというもの。被保険者は役員にするケースがほとんどだと思います。ほとんどの生命保険会社が「経営者大型保障プラン」とか言った名目で、節税(と称する)生命保険を売りつけています。
法人が支払った保険料の税法上の取り扱いですが、大まかに言うと養老保険か定期保険かという点と、保険金受取人が誰かによって取り扱いが変わります。最近は保険商品が多様化しており、それに後追いする形で通達改正があったりとかで、スポーツの世界のドーピング問題に似ているような気がします。今回は、定期保険(保険期間中に死亡事故が発生したら保険金が支払われるもので、最もシンプルな保険商品)を利用した節税効果について見てみます。
うだうだ文章にしても分かり難いので図にしました。全額損金タイプの定期保険に加入した場合の節税効果を検討したものです。前提条件は図中の通りで、4年間加入して5年目に解約した場合の通算での税負担と現金収支を見たものになります。この場合、5年トータルだと税負担は150軽減されるのですが、現金流出が300増加します。まぁ、150の税負担を逃れるために300の現金が出て行く・・・ということです。勿論、支払保険料に対する解約返戻率が100を超えれば、税負担も軽減されて現金も増えると言う良いとこ取りになりますが現実にはなかなかありません。
今回のケースで増加した現金流出は何かと言えば、保険加入期間の保障を買っていることになります。もともと保険料と言うのは保障を買うために支払うものですよね。
例えば、解約返戻金の入る時点で何らかの費用発生(例えば、退職金の支払であるとか大規模修繕であるとか)があれば、プラスとマイナスが相殺されて利益はゼロとなり、解約返戻金に対する税負担は考えなくて良くなります。
生命保険の節税効果と言うのは、あくまでも課税のタイミングを繰り延べる(図で言えば、4年間の利益を5年目に実現させています)効果であって、トータルで考えると税金そのものは安くなりません。勿論、保険に加入した時よりも将来的に税率が安くなればその限りではありませんが・・・。
私は自分自身が保険商品を販売していたこともありますので、商品の仕組みやらセールスポイントやらは普通の税理士さんに比べれば豊富だと思います。まぁ私の知る限り、生命保険の外交員さん(いわゆる保険のおばちゃんですね)ほど法人の保険加入効果について理解の無いまま、ただただ「節税だ」「節税だ」と保険を売りつけているケースが多いですね。お付き合いもかまわないのですが、加入のポイントと効果について良く理解して加入しないと、結局は「銭失い」になりかねないと思いますよ。
投稿者: 佐藤和仁税理士事務所 日時: 2008年09月29日 13:24